『ドル円は、米国の財政赤字等から70円台になる?早期景気回復から早晩100円台になる?』
2009年08月26日
2009年8月24日「ど貧民」様からの質問
Q
『ドル円は、米国の財政赤字等から70円台になるのか、早期景気回復から早晩100円台になるのか?』
A
まず、確認です。
米財政赤字に関してですが、直近のデータでは米財務省が2009年8月12日水曜日に発表した7月の財政収支は、財政赤字が1806億8千万ドル(1ドル95円で計算すると約17兆円強=)とされます。09会計年度(08年10月〜09年9月)の財政赤字の過去10ヶ月間の合計は、1兆2669億5800万ドル(約122兆円)となり、過去最悪を更新することとなりました。
景気後退に伴う税収減と巨額の財政出動による歳出増で、米国の財政悪化が一段と進めば米国へのデフォルト(破綻)リスクが浮上しドル安や米債長期金利の上昇という問題が市場テーマとして大きくクローズアップされる可能性は十分だと思います。
もっとも財政赤字に関しての分析/解説は枚挙に暇が無いので、この場では古い話で恐縮ですが平成19年8月24日(金)(会場:東京都文京区シビックホール)に日本の会計検査院の招きで、当時、米会計検査院(GAO)院長を務め、現在はピーター・G・ピーターソン財団の最高経営責任者(CEO)であるデビッド・ウォーカー氏の講演内容をご案内したいと思います。
- アメリカの財政は非常に憂慮すべき状況
- アメリカの将来における真の脅威は国債残高の増加と公的年金や医療保険制度として知られる社会保障
- 日本は経済的な割合からして、アメリカよりもかなり高いレベルの財政赤字と債務がある
この3点目を重要なポイントと考えます。
ファンダメンタルズでみると米国(ドル)と日本(円)の経済的基礎条件を引き合いにして分析するわけですが、少なくとも当時の米会計検査院(GAO)院長は財政上、米国も日本もお互い危険水域、とした見方であり、日米双方同士でお互いの累積赤字懸念を取沙汰していても致し方ない、とも解釈できます。
つまり、対米国財政収支、そしてわが国の財政問題も組み込んで考えなくてはいけないドル円相場においては財政上のファンダメンタルズでは、”ドル売り・円売り”になる、とした見方です・・。
別途、世界の基軸通貨である米国ドルと第三国との通貨取引で考えれば、ドル売り、若しくはドル弱含みと考え、その第三国が対円相場で強まった場合、ドル円相場にどのような影響を与えるか、と考えておくのも大事なことです。
第三国通貨ペア<いわゆるクロス円相場>からドル円相場に逆連動する可能性です。
そもそもドル円相場は政治的に変動する可能性の高い通貨ペアであり、クリントン大統領当時の超円高、そして共和党政権時代の円安容認、とされてきました。
しかし、最近の事例から考えると5月13日に報じられた、民主党「次の内閣」財務相である中川正春衆院議員(※当時の報道から)がBBCの取材に対し、民主党が政権をとればドル建ての米国債購入は手控える、という趣旨のコメントを発した一件です。
現実的に外貨準備の運用では為替市場にインパクトを与えない形で中長期的に多様化を図ること、およびドル基軸体制を守ることが日本の利益になること、等、その後に関係者から発せられたこともも考えれば、ドラスティックな円高、逆に凄まじい円安論に踊らされないほうが無難では無いでしょうか?
勿論、米国側では、民主党主導の政権が誕生する場合、そもそもの日米同盟のありようから含めて、一定の警戒感が出てきているとは想像するに容易いですが、それをドル円為替相場において、固め撃ちするのは危険だと感じます。
テクニカル的な面で見てみましょう。
一概には言えませんが、例えば過去2005年からのドル円相場の年間変動幅は17.75円であり、本年の記録である安値87円台−高値101円台、から紐解くと既に約14円幅あり、平均値幅に足りない約3円幅を上下に足して仮説を立てるなら最安値は84円、若しくは最高値104円、、、とした更新になります。
出所参考:岡三オンライン証券:e-profitFXチャート/ドル円/
個人的には5年サイクル論などで80円台割れ再現の可能性も念頭にはありますが、現実的には前出、変動幅内でのレンジ内推移で考えています。
短期的には先週(※8月24日現在での見解)の下値攻めでも93円台の抵抗をクリア出来ずに反発に転じており、一旦底打ちを見て、ドルの上昇余地を探る動きに転じた可能性が生じています。
値動きの中で、95円台半ば越え/95円台後半超えアプローチを見せた場合は、目先の底値を見た可能性が一段と高くなります。
但し、現状は、はっきりと短期トレンドの変化を確認できた訳ではないですからここから上値追いでのドル買いを推奨するつもりもなく、慎重的な様子見姿勢は崩さず、短期的なトレーデイング=リスクコントロール、の重要性が更に増すもの、と考えます。
FXよろず相談窓口回答者 武部力也
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